がん免疫治療Q&A
よくある疑問・質問
細胞培養期間は個人差があるものですか?
大きな差はございませんが、通常は3週間ぐらいで治療用の細胞に増殖していきますが、多少の個人差がありますので、培養状態をみながら治療計画を立てることが大切だと思います。大阪医誠会がん・神経難病治療クリニックでは培養室を併設しておりますので、適切なタイミングで患者さんの体内に戻す時期を検討しながら治療をしております。
がん末期の人はだれでも腹水が溜まるのでしょうか?
誰でも腹水が溜まることはございません。お腹の中にがん細胞が転移してがん性腹膜炎の状態になった時に腹水が溜まります。ただし、肝機能に障害があった場合でも腹水が溜まることがありますので、腹水の中にがん細胞があるかどうか確認することによって、腹腔内のがん免疫療法をやるかどうかは決める必要がありますので、ご注意いただきたいと思います。
がんが転移・進行している末期状態でもTリンパ球療法は有効ですか?
抗がん剤と免疫療法を併用することで有効性が上昇するという動物実験データがヨーロッパの2007年のジャーナルに報告をされました。したがって抗がん剤の際に免疫療法を併用することを是非、お勧めしたいと思います。
免疫治療は、患者個々の体質で対応不可などはないでしょうか?
免疫療法は個々の体質によって対応できないことはございません。病状によってどのような免疫療法を使うかはありますので、まずはご相談いただきたいと思います。ご安心ください。
高濃度ビタミンC点滴療法をされていますが、どういうメリットがありますか?
高濃度ビタミンC点滴療法は主に抗がん剤の副作用を軽減する目的で使用しておりますが、必ずしも免疫療法と併用する必要があるのではなく、併用の場合は点滴投与で行うため免疫療法の日にちとずらして投与して頂くことが大切であります。
抗がん剤と併用したほうが効果は高いのでしょうか?
2007年にフランスのグループから免疫療法と併用すると抗がん剤の効果が高くなるという論文が出されています。
獲得した免疫はずっと体内に存在しますか?それとも有効期限があるのでしょうか?
獲得された免疫は、記憶細胞に残ると考えられていますが、動物実験では、約1年間は残るとされてます。
ネオアンチゲンを調べるための自分のがん組織を取得するにはどうすれば良いか教えてください。
手術されたがん組織のパラフィンブロックでがん組織の部分を手術された病院から借用して下さい。
家族が卵巣がんの治療(手術、化学療法)を終え6年になり、数値も問題なく現在過ごしておりますが、今後、免疫療法を取り入れるなら、どういうタイミングがよいか教えていただけますか?
診察は、10年間されて、どこかに転移した可能性があると診断された時に免疫療法と抗がん剤を併用されてください。
この治療方法は乳がんに有効でしょうか?
過去に乳がんの人に有効であった経験はあります。
近々、免疫療法は保険適用になる可能性はあるでしょうか?
保険適用は困難ではないかと思います。
免疫療法が「効きやすいがん」と「効きにくいがん」があると聞いたことがあるのですが、どうですか?
その通りです。がんの抗原性が高い腫瘍ほど効きやすいと考えられてます。
免疫は10代~20代の人がより多く持っているのでしょうか?年齢による推移があれば教えてください。
一般的に加齢によって少しずつ免疫力は低下すると考えられています。
自分がどれだけの免疫を保有しているか調べることはできますか?
ナチュラルキラー活性を血液検査で調べることができます。費用は約1万円必要です。
NK細胞はコロナの治療に使われているのですか?
コロナ治療にはNKということで特に使われておりませんが、コロナとか感染した細胞に対してNK細胞はそれらの細胞を破壊するということが分かっておりますので、現在まだ言われておりませんが、NK細胞はウィルスに感染した細胞を破壊するということははっきりと分かっております。
NK免疫治療は特に有効ながんの種類はありますか?
がんの種類には影響ありません。これは自然免疫療法でありますので、がんとかウィルスとか細菌であろうが感染された細胞に関して戦ってくれるので特に種類には関係ありません。
主治医の話では免疫療法、遺伝子治療はエビデンスがないと言われましたが?
ネイチャーという雑誌にエビデンスは出ておりますので、エビデンスをご存じないというだけで探せば山ほど沢山ありますので誤解のない様にお願いいたします。
実用性についてはどうですか?標準治療との併用は有効とのことですが、効きにくくなるということはありますか?
抗がん剤と併用すると効きやすくなると、抗がん剤を破壊しやすくなるということが学会で報告されております。
2年前に大腸がん、昨年は乳がんの手術と薬物、放射線療法を受けましたが、白血球数が2500で少なく単球だけが11.5と高いのですが、どのように理解すればいいのでしょうか?
恐らく抗がん剤を使われたり、放射線治療をされて白血球数が2500はちょっと下がっていると思います。そんなに少ないということはありません。白血球が1500以下に下がると少ないと考えられておりますので、特に少ないということはないので、あまり思い込まなく気分をゆったりすることが、かえって大事だと思いますので、その様にされてください。
NK免疫療法はがん以外の病気にも効果はありますか?
感染細胞、今のコロナウィルスなどのウィルス感染細胞に対してもNK細胞が働いてきますので、今のコロナウィルスに対してもNK細胞は働くという風にお考えください。
採血から投与まで平均何回くらい実施する必要がありますか?
免疫の治療は6回ぐらい投与すると自分の体の中で記憶されるNK細胞も出てきてるのではないかと考えられておりますので、投与回数は6回を目途と考えられております。
NK細胞が増えすぎるということはありますか?
NK細胞が増えすぎるということはありません。自分の体の中で調整をしておりますので、増えすぎて何が起こるということは特に報告はされておりません。
笑いやプラス思考がNK活性を上昇させるのは脳からの何か生理活性物質が分泌されるからでしょうか?そのような物質が特定できれば直接投与することでNK細胞を高活性化できる期待がありますね。
恐らく今、インターフェロンガンマなどのサイトカインが分泌されてNK活性を高めるという風に考えられています。
NK細胞と免疫の高さは血液検査のどの数値でわかりますか?また、どれくらいあれば高い方ですか?
人によって違います。だいたいNK活性が15~40%の違いがあります。
NK免疫療法はどんながんに適用されるのでしょうか?
あらゆる種類のがんに十分適応であるという風に考えられます。
現在、がんの化学療法を受けています。化学療法がNK細胞の活性化を妨げるということをどのように捉えれば良いでしょうか?また、抗がん剤治療中でもNK細胞をできるだけ活性化させる方法はありますでしょうか?
現在、化学療法を受けてられる方がおられまして、化学療法がNK細胞の活性化を妨げるという事、抗がん剤がNK細胞を妨げるという事は事実ですけれども、そういった場合でも抗がん剤治療をしながらNK細胞療法を受けることが十分可能であります。
NK細胞治療に副作用はありますか?
殆ど副作用のない方が多く占めます。まれに発熱などの微熱がありますが、殆どは副作用なく治療は受けられます。
抗がん剤治療中は、NK細胞治療は受けれますか?
十分可能でありますので、ご相談いただけたらと思います。
がんの治療にはどのような方法がありますか?
がん治療の主な治療方法は手術、薬物療法になります。この薬物療法にはいわいる化学療法、分子標的治療、免疫療法も含まれております。
大阪医誠会がん・神経難病治療クリニックでは遠方から通院されている方もいるのでしょうか?
九州から通院されてる方もいらっしゃいます。採血して培養が2週間、あるいは樹状細胞は1週間で注射する時に受診していただくだけで遠方からでもいらしていただておりますので、どうぞおいでいただきたいと思います。
現在がん治療を行っていて、それに加えて免疫療法も試してみようかと検討中です。その場合はまずどうしたらいいですか?
当クリニックでは、無料相談を行っておりますので、そこでご相談いただくことも可能ですし、今、診てもらっている先生とも相談して免疫療法を行ってみたいと伝え相談なさって受診していただくことの方が、今までのデータがわかりますのでベストでございますが、残念なことに先生方でも免疫療法に関して評価される先生方がそんなに多くはないとう言う現状であります。それであってもベストのがん治療と言うのが大切でありますので、どこの免疫治療施設でも結構ですが、相談に行かれてどうしたら良いかと相談されたら良いかと思います。大阪医誠会がん・神経難病治療クリニックではいつでも対応しております。
がん予防には免疫力を高めておくことが大切だと言われていますが、なんらかの対策をして免疫が高まったということはどうして確認するのでしょうか?
一般的にNK細胞活性を測定する方法があります。通常の検査でも調べることができます。血液を採血してNK活性を調べるのが確かめる方法となります。
どんな部位のがんでもネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法は効果があるのでしょうか?
ネオアンチゲン樹状細胞療法だけと言うのは、やはりがんは抗がん剤とネオアンチゲン樹状細胞、あるいは放射線療法とネオアンチゲン樹状細胞療法と併せて行うのが一番有効な行い方でありまして、2007年にフランスのグループが動物実験で免疫が十分にあるマウスと免疫不全のマウスと比べてあるいは放射線療法の治療効果を比較したデータが出ておりますが、いずれも免疫機能が十分でないマウスは抗がん剤も放射線治療も効きが悪いというがありますので、どこの部位とか関係なく免疫だけで治療することではなく、可能であれば抗がん剤あるいは放射線療法と併用すると言うのが一番良い治療法でないかと思います。
DC療法やTIL療法などの療法は自分で選択するのですか?病状と合ったものを先生と相談の上で決めるのですか?
DC療法はがんワクチン療法でありますので、ワクチン療法を希望の方はDC療法、TIL療法は腹水、がん性腹膜炎でお腹の中に腹水が溜まっている人に関してはTIL療法を行います。ご相談いただきながら、医師と患者さんと相談しながら、決めさせていただいております。どうぞご遠慮なくご相談ください。
血液がん含めてどの悪性腫瘍にも有効ですか?
白血病の抗原も分かっておりますので血液がんについても免疫療法が有効でございますが、どのような時期に行うかという事は時期に関して検討する必要がありますが、血液がんにも有効であります。
NK免疫療法の効果は相対的にどれ位ですか?
NK細胞療法の効果を具体的な数値で表すのは、現段階では難しい段階です。今後、患者様により具体的なエビデンスをご提供できるよう、努力していきたいと存じます。
前立腺癌について欧州ではどんな治療法が主体でしょうか?
前立腺がんの治療は欧州でも日本でも大きな違いはないと思います。手術、放射線、内分泌、化学療法などを病気のステージに応じて行います。前立腺がんの新しい薬剤の開発は急速に進行しております。まだ、日本で未承認の薬剤が欧州で使用されているものもあるかもしれませんが、それらは日本でもいずれ承認されると考えられます。
NK細胞の増大効果はどれ位あるのか相対的な数字があれば教えてください
NK細胞は患者様の末梢血を3-4週間培養しますと、1000倍くらいの数の活性化されたNK細胞が増加します。約30-50億のNK細胞を患者様に点滴投与を行います。
免疫療法にリスクはありますか?
当クリニックで行っている、NK細胞療法や樹状細胞療法などの免疫療法は副作用があっても、比較的軽度のものです。微熱が出るとか、注射部位の発疹などが主なものです。
おこげはガンを誘発するともいわれますが、本当ですか?
マウスにおコゲを食べさせて胃癌を作成した実験がありますが、このときの量は人間なら、おコゲを毎日どんぶり1杯、数十年食べ続けることにも相当するようです。少なくとも、人がおコゲをたくさん食べると癌になるという、疫学データは存在しないようです。日常の食生活で極端な量のおコゲを食べるのでなければ大丈夫かと思います。常識的な量であれば問題ないと考えられます。
NK活性は、簡単に調べられるのですか?
NK活性は10ml程度の採血で簡単に調べられます。
白血球の分画の意味を教えてください
白血球は5種類に分類されます。すなわち、好中球(40~70%)好酸球(0.5~10%)好塩基球(0.3~2.0%)単球(4~10%)リンパ球(20~40%)その5種類がどの様な比率で存在するのかで、病気の診断に応用できます。
再発がんにも効果がありますか?
再発がんにも効果は考えられますが、抗がん剤と併用で治療されることをお勧めいたします。
NK細胞治療はどこでもできるのでしょうか?
通常の病院や通院では、混合診療が医療法で禁止されていますので、行っていません。保険診療外で、リンパ球細胞療法で検索して頂くと、施行している施設が出てくると思います。
免疫細胞とオートファジーの関係は?
血液中の単球がマクロファージと樹状細胞として分離され、いずれも免疫担当細胞となります。マクロファージとは貪食細胞とも呼ばれ、外敵を食べて消化酵素で溶かしてしまいます。自然免疫として働きます。樹状細胞(DC:Dendritic Cell)は、がんに対するワクチン療法に最も重要な役割を果たしています。
免疫療法は保険がききますか?
免疫細胞治療は自費治療ですが、所得税の還付が受けられる医療費控除の対象となります。
免疫細胞療法とは、どういった治療なのですか?
患者さん自身の細胞を使って作製したワクチンを使うため、身体にやさしいオーダーメイドのがん治療で、診察も含めて1時間程度で終わる通院治療です。
どんながんでも治療を受けられますか?
原則的に、どんながん患者さんでも治療は受けていただけます。ただし、病状によって、免疫細胞の培養が困難な場合があります。また、血液疾患などの患者さんにつきましては、治療を受けていただけない可能性があります。
尚、投与当日の体調により治療をお受けいただけない場合があります。
副作用はありますか?
抗がん剤などとは違い、ご本人の細胞を使用した治療なので目立った副作用はほとんどありません。
培養した細胞を体内に投与する際に、免疫を整える(活性化させる)薬を投与する場合があるので、熱が出ることが10%程度ある場合があります。
樹状細胞療法(DC療法)の場合、投与した箇所にかゆみ・水ぶくれ・発赤が現れる場合もあります。
主治医の了承が得られないと治療できませんか?
当クリニックには入院施設が無く、また24時間体制で無い為、主治医の先生の病院に籍を置く事は、患者さんやご家族さんにとっても安心だと思います。
より治療効果が上がる様に主治医の先生の治療を継続し、免疫細胞療法と併用するケースも多くあり、主治医の先生と連携を図りながら治療を行う方が望ましいので、主治医の了承は得た方がより良い形で治療を行えると思います。
※ 主治医の了承がないと医療相談が受けられないという事ではありません。
医療相談に関しては、口頭で詳しくお伝え頂ければ、主治医の先生に伝えなくても(詳細なデータが無くても)医療相談を行う事が出来ますので、一度お越しになられて下さい。
1セット(1クール)終了後も治療を続けなければならない、という事がありますか?
患者さん個々によっても状態が異なり、そもそも当クリニックでは1セット(1クール)といった明確なくくりを設けている訳ではないですが、平均的に10回~12回投与終了時点で経過を観るケースがほとんどです。
PET-CTなどの画像診断、免疫機能検査・腫瘍マーカー等々で、腫瘍のサイズや転移状況、或いは患者さんのお体の状態を観察しながら、次回以降の方針や投与プランなどを患者さん、ご家族の方と相談の上で決定します。
がんの樹状細胞療法とは?
がん抗原が免疫系で認識される際には、抗原提示細胞である樹状細胞ががん細胞の細かい断片を貪食します。貪食されたがん抗原は分解され、樹状細胞表面の抗原提示分子(MHC分子)の上に抗原エピトープとして提示されます。そして樹状細胞が所属リンパ節に遊走し、そこでT細胞に対してがん抗原情報の指令を発することで、がん抗原特異的細胞傷害性T細胞に代表される抗がん性の細胞性免疫が誘導・確立されるわけです。これががんの樹状細胞療法と呼ばれるものです。
樹状細胞を使って免疫療法を行なう場合、具体的にはどのようなことをするのですか?
樹状細胞は、末梢血中の単球からGM-CSFと>IL-4を用いることで、分化・誘導することができます。この方法で誘導された比較的未熟な樹状細胞は高い貪食能をもち、抗原を貪食・消化した後、樹状細胞の表面に抗原を提示する能力を持ちます。この様な樹状細胞を腫瘍内に注入し、腫瘍内で壊死した腫瘍細胞やアポトーシスを起こした腫瘍細胞を樹状細胞に貪食・消化させる方法が一つあります。
またがん抗原を試験管の中で貪食・消化させ、がん抗原の提示能力をそなえるようになった成熟樹状細胞を生体内に戻してやり、抗がん性をもつリンパ球を体の中で誘導する方法もあります。つまり樹状細胞にがん抗原を喰わせて、生体内に戻してやるのです。この際利用するがん抗原には、自己腫瘍細胞由来の抽出液や人工抗原であるがん抗原ペプチドがあります。
腫瘍細胞由来の抽出がん抗原とは?
腫瘍由来の抽出がん抗原とは腫瘍細胞の凍結・溶解を繰り返すことで得られた腫瘍抽出液のことで、この中には多数のがん抗原が含まれていると考えられます。この腫瘍抽出液を樹状細胞に貪食させて、これをがん患者さんに注射するわけです。
ちなみに腫瘍細胞そのものや腫瘍抽出液をワクチンとして、直接がん患者さんに投与する腫瘍細胞ワクチン療法も一部には提案されています。この場合には、投与された腫瘍細胞は生体内で更に分解され、生体内の樹状細胞に貪食されたあと、樹状細胞によって抗原提示が行われ、抗がん性の免疫反応が誘導されると考えているわけです。
人工抗原であるがん抗原ペプチドを使ったワクチン療法とは?
がん細胞に特異的に発現している、あるいは正常組織と比較して高発現している抗原が次々と同定されました。これらの抗原はアミノ酸配列もわかっていることから人工的に合成することが可能で、がん抗原ペプチドと呼ばれています。
がん抗原ペプチドを使って免疫する場合には、がん抗原ペプチドのアミノ酸配列によって樹状細胞上の抗原を提示する分子(MHC分子)との親和性が異なるため、現在は主としてHLA-A2, -A24 の方を対象として免疫治療が行われています。
なお、具体的な免疫のやり方は、がん抗原ペプチドを適当なアジュバントとともに直接投与する方法と、樹状細胞にこれらのがん抗原ペプチドを貪食させてから投与する方法があります。
がんの樹状細胞療法の課題にはどんなものがありますか?
- がん抗原ペプチドを用いる場合はHLA のマッチングが必要であり、すべての症例に治療を行なえるとは限らないことです。
しかし、がん種によっては、現在ペプチベータを抗原として使用する場合、患者様の白血球の型(HLA型)を問わず、樹状細胞ワクチン療法が可能となります。 (独ミルテニーバイオテク社製MACS® GMP PepTivator® WT1、MUC1、NY-ESO-1を使用しています) - また多種類のがん抗原やそのペプチドを用いることが望ましく、そのため色々ながんでユニークに発現しているがん抗原の同定が不可欠であり、しかも個々のがん患者さんの腫瘍が、それらの抗原を発現しているか否かの検索も必要となります。
- また現実問題として、標準療法が無効であった進行がんや転移再発がんを樹状細胞療法の対象とする場合は、樹状細胞療法単独では不十分でないかと考えられます。生体外で培養・生成した免疫担当細胞である腫瘍抗原特異的T細胞 (CTL)や(CD3 抗体)刺激T 細胞移入療法との併用療法が適当であると考えています。
がんの樹状細胞療法はどのように行なうべきでしょうか?
一般に有効な免疫を成立させるためには、感染症での予防接種でみられるように予防的(prophylactic)にワクチンを投与した場合には有効であるが、治療的(therapeutic)には、その効果がなかなか発揮されないわけです。
樹状細胞療法も、臨床試験をデザインする時には、外科療法などの第一選択肢である標準療法後の出来るだけ早期に、微小残存病変を対象として行なうのが適当と考えられます。
がんの免疫療法の評価について
がんの治療法には、がん細胞を出きるだけ除去するために行なう外科療法、それでも微量でも残るがん細胞をやっつける化学療法や放射線療法、そしてそれでも残るがん細胞を理論的に完全にゼロにまで体の中から消去できるがんの免疫療法があります。
がんの免疫療法はまだ新しい研究段階の治療ではありますが、副作用が少なく安全に治療を行うことができ、がんの標準治療の4 本目の柱として成長していく可能性があり、期待が寄せられているところです。
ところで、これからのがんの免疫療法でも、これを実施する対象には、中後期はいうにおよばず末期のがん患者さんもかなり含まれますので、緩和医療の一環としてがん免疫療法が行われてくる比重も今後増えてくることも予想されます。臨床試験のエンドポイントとして評価される生存期間に差がでない状況でも、がん免疫療法を行なうことでがん末期の種々の症状の出現をおさえて高いQOL(Quality of Life:生活の質)を維持することが実現できるか否かの評価も重要です。この際には、がん患者さんの主観的評価も取り扱うわけですから、広く通用する評価方法を用いて、がんの免疫療法によって高いQOLを維持することができるか否かも重要なポイントになってきます。
がんの免疫療法の目標について
がんはたとえ手術に成功しても、その後の再発・転移が大きな問題となっています。
このためがん免疫療法は、
(1)手術後の再発を予防する。
(2)不幸にしてがんが再発・転移した場合や、または手術が不可能な場合に、がんの進行をくいとめる(この際には、がんと共存するもいいます)。
(3)症状の出現を抑えて、高いQOL(Quality of Life:生活の質)を維持する。
以上3つのことが目標となります。
悪性腫瘍の治療において、手術療法が腫瘍を取り除く最も確実な方法であることは間違いありません。そのため、悪性腫瘍に対する第1の治療として手術療法が今後も推奨・選択されます。しかし、進行した悪性腫瘍では、手術後の再発が大きな問題であり、手術後の再発を念頭においた治療戦略を立てる必要があります。
またがんが再発・転移した場合、あるいは手術が不可能な場合、過去様々な化学療法・放射線療法が行なわれてきましたが、患者さんのQOLを落としてしまったり、副作用のため入院を必要としてしまい、日常生活を犠牲にしていた場合がありました。
現在、がんの治療に対する患者さんの意識の変化がおこっており、日常生活をできるだけ犠牲にしないで、副作用の少ない、外来で受けることのできる治療が望まれています。そのため、がんの治療に対する医療側の対応の変化も現在求められており、がん免疫療法は、患者さんのニーズに応えて、医療側が提供できる新たな有効な手段になる可能性をもっているわけです。
がんの細胞免疫療法の今後取るべき方向性について
がんのがん免疫治療と一口に言っても、色々なやり方があります。そもそも免疫機構そのものは免疫細胞間相互作用という精緻を極めるネットワークから成り立っており、そのどれもが重要であり、これらをうまく使いこなすことによって、有効な免疫治療効果が期待出来るわけです。
免疫細胞によるがん免疫療法で、LAK, TIL, CAT, CTL いずれの細胞にしても、生体外では腫瘍細胞と接触すれば腫瘍細胞を障害、殺傷することができます。しかしながら期待された程の効果が上がらない場合があります。これからは生体内に投与された細胞の活性をいかに維持しつつ、細胞を腫瘍局所に集積させるかという免疫細胞の伝達法(Cell Delivery System)の開発が重要になっています。また腫瘍自身が免疫を抑制する様々な物質をつくり、移入した細胞の腫瘍傷害活性を阻害することもわかっています。これをいかに克服するかも重要な点になります。
また新しいがんの免疫治療法の一つとして注目を集めている、樹状細胞療法の今後とるべき方向性としては、標準治療後の微小残存病変に対する補助療法として位置づけ、抗腫瘍効果を持つと考えられる細胞の移入療法と樹状細胞療法とを併用して行なうことが望ましいといえます。そして自己腫瘍細胞由来の抽出抗原や適切な数種類のがん抗原ペプチドを用いた樹状細胞療法を行ない、できるだけ早期に生体に抗原に対する獲得免疫を成立させることも今後の主眼になります。腫瘍再発の無い期間がずっと続くことや、高いQOL(Quality of Life:生活の質)を保ったままでの生存期間の延長を証明することが、がんのがん免疫治療を今後の標準治療の1つとして認知させるためには重要でしょう。
今までのがん治療法と今後のがんの免疫治療との関係について
がんの治療に関して言えば、早期発見、早期治療の実現が王道で、これによってがん治療法のとりうる選択肢が増え、がんの低侵襲治療も可能になるわけです。この際、採用される外科療法、化学療法や放射線療法につづいて、がんの免疫療法もうまく組み合わせて採用されますと、たとえがんと宣告されても恐れることはないという時代が来るのではないか。早くそのような時代が来ないかと、がんの免疫学研究者は日夜研究に邁進しているところなのです。