大切な人をサポートするあなたへ(ご家族・友人・知人のかたへのメッセージ)
患者さんご自身が納得して前に進めるために
がんの診断を受けた際、患者さんご自身にはできるだけ納得してその後の治療を進めて頂きたいものです。しかし病名を告げられ動揺している時に、冷静な判断を求めるのは難しいことでしょう。
ご家族は治療を進めていくに際し、患者さんご自身が何を大切に考え、何を伝えたいのか、そして何をしたいのかという思いに傾聴し、引き出し、その思いが叶えられるように治療を選択していくことが大切です。
病院では治療の選択肢をいくつか提示されて「ご自身で決めて下さい」と言われることもあると思います。
しかし、普段医療に携わっていない限り、予測のつかない先のことに関して決定を下すのは大変難しいものです。
そのような時に、ご家族からの助言・見守り・傾聴があることで、立ち止まって考えを整理できるのではないでしょうか。
納得のいく選択をするためには、正しい情報を
どんな場面においても、何かの判断を下す際には、正確な情報が必要です。
しかし、病名を告げられ、その後の検査・治療などをあわただしく受けている患者さんご自身が、ご自分の病気に関して、広く情報を得ることはなかなかできる事ではありません。
その際に、ご家族がご本人に代わって情報を収集し、患者さんが判断しやすいように整理してあげることはとても大切なことです。
がんという病気は、その種類や進行度によってかなり予後が違います。早期に発見されて内視鏡の処置のみで完治することもあれば、大きな手術、辛い抗癌剤治療などを受けても病勢を止められないこともあります。
ですから、病気の治療方針を判断するにあたって、患者さんの病名・進行度(病気の広がり)・病理組織などを知ることがとても大切です。
次に患者さんの置かれている状況(がん自体の状態以外にも、心臓病、糖尿病などの病気の病状も大切です)で可能な治療の方法を考え、それぞれの治療法の良い点と悪い点を把握し、患者さんの予後を考え、なるべく希望に沿える方法を模索します。
今は、情報時代です。書籍・インターネットなど情報源はたくさんあります。しかし、その中には、不適切な文章・過大な文章・根拠のない文章などが氾濫しています。
その中から正しい情報・必要な情報のみを得ることは、普段医療に関わっている人でなければ、かなり難しいものです。
患者さんの診断・治療方針にわからない点がある時には、限られた時間ではありますが、セカンドオピニオンを聞きに行き、他の専門医師の判断を仰ぐのも良いでしょう。
当クリニックの担当医師は、みな、数十年にわたりがん治療に携わっております。患者さんご自身が、現在、病気のどの段階におられ、どのような治療の選択肢があるのかということを、良い点も悪い点も含めて大局的に判断します。
辛い現実があることもありますが、限られた時間を有意義に過ごすお手伝いをする事もできると思います。
考え方はみなそれぞれ違います。正しい選択というのはあるのでしょうか?
患者さんの病状、治療、そして予後予測はみなそれぞれ違います。
患者さんの考え方、守らなければいけないもの、伝えたいこと、伝えたい人、そして経済状態、みな、それぞれ違います。
ですから正しい選択というのは無いと思います。患者さんご本人が、納得して前に進めるかどうかが大切なことでしょう。
「正しいのかどうか」ではなく、「納得して進んでいるのか」ではないでしょうか。
一人だけで考えずに周りの人にも相談してみることも解決方法につながるかも知れません
患者さんの病気について、医師から配偶者・子供に先に説明があり、治療法の選択を尋ねられることもあると思います。
現在は、「ご本人の決定を尊重する」ことが一般的になっています。
しかし、がんの病名告知を受け、つぎつぎに進められていく検査・治療などを受けながら、じっくりと落ちついて考えることは難しいと思われます。
その中で、ご家族が自分一人で考え・判断し・決定することは無理があります。
可能な範囲で家族に相談し、自分の気付かなかった疑問点・治療法などに知恵を出し合って進めていくことが後悔の少ない選択へとつながります。
患者さんは、自分の家族が疲れていると感じると、本当のことを話さなくなることがあります。患者さんご自身に、本当の気持ちを伝えてもらい、先に進んでいくためには、看護するご家族の心も体も穏やかなことが望まれます。
そのためにも、自分一人で考え込まず、相談できる人には、広く相談してみてはいかがでしょうか。
そばにいること
患者さんは、病状によっては、動けなかったり、食べれなかったり、眠れなかったり、いらいらしたり、落ち込んだり、焦燥感が募ったり、といろいろんな状況になるでしょう。
そのような時にご家族にできることは何でしょうか?
具体的に何かをしてあげなくていいと思います。
そばにいてあげるだけでいい。患者さんが目を覚ました時に、家族がそばにいてくれるだけでどんなにか嬉しいでしょう。
具体的に何かをしなくてもいいと思います。本を読んでても、うたたねしてても、テレビを見てても、良いんです。そばにいるだけで。
がんの治療は長期戦になります。患者さんのご家族は「第二の患者」とも言われるくらいです。ご家族ご自身の体調管理がとても大切です。なるべく負担を分かち合って長期的な視点に立って考えてください。