免疫細胞療法についての学術的データと当院における実際のデータの紹介
当院では抗がん剤・放射線治療・手術を併用して免疫療法を行うことをおすすめしています。
なぜがん治療に免疫療法が必要か?(動物実験データ)
がん治療に免疫療法の併用をおすすめする根拠として、2007年にフランスの研究グループにより報告された「マウスを使った免疫力の比較実験」のレポートをご紹介します。
免疫力のないマウスでは
抗癌剤や放射線治療が効きにくい
上図のように、免疫力のないマウスでは抗がん剤や放射線治療が効きにくいことがわかっています。
したがって、これからのがん治療は、免疫治療を併用しながらの手術、抗がん剤投与、放射線治療などをする事が大切になります。
がん抗原の提示とT細胞の活性化(獲得免疫)
免疫とは、私たちの生体防御反応そのものですが、それには抗原とは無関係な「1)自然免疫」 と、抗原に対して特異的に対応する「2)獲得免疫」の2つがあります。1)、2)それぞれで働く細胞を記しています。
1)自然免疫(抗原に非特異的)
- NK細胞(Natural Killer cell)
- γδ T細胞
- 単球(M1マクロファージ)
- 好中球
2)獲得免疫(抗原に特異的)
- 樹状細胞(DC)
- ヘルパーT細胞
- キラーT細胞
- 制御性T細胞(Treg)
- B細胞→抗体産生
がん抗原の提示とT細胞の活性化(獲得免疫)
樹状細胞(DC)はHLA-クラスⅠの分子を介して、がん抗原(ペプチド)情報をキラーT細胞に送り、抗原情報を受けたキラーT細胞ががん細胞を傷害します((+)免疫)。
この情報交換を邪魔する分子がPD-1やCTLA-4で、(+)の免疫のブレーキ、すなわち(-)の免疫となります。
(-)の免疫を防御するのが免疫チェックポイント抗体(オプジーボ、キイトルーダ、ヤーボイ)であり、Tregを減少させます。
免疫治療の基本
免疫治療の基本的考え方は、(+)の免疫を増やし、(-)の免疫を減少させる事です。それぞれの具体的免疫治療法を記しています。
正(+)の免疫増強
- 癌ワクチン療法
- 免疫療法
- 細胞療法
- 抗体療法+NK移入(ADCC)
負(-)の免疫減少
- Treg(制御性T細胞)
・CY ・CCR4抗体 ・CD25抗体 - MDSC(骨髄由来抑制性細胞)
- 液性因子(TGF-β、IL-10、IL-6、PGE2)
- 免疫チェックポイント抗体
1. 抗CTLA-4抗体(ヤーボイ)
2. 抗PD1抗体(オプジーボ、キイトルーダ)
当院における抗がん剤と免疫療法の併用データ
当院で実際に行った抗がん剤と免疫療法の併用による腫瘍マーカーとTreg(抑制性T細胞)の変更データをご紹介します。
免疫チェックポイント抗体は、Tregを減少させますが高価でありますので、当クリニックでは安価のCYで(-)の免疫であるTregを減少させてから、(+)の免疫治療を行っています。
がんに対する免疫療法
能動免疫療法
- がん抗原特異的(ワクチン療法):
樹状細胞(DC)腫瘍抗原ペプチドワクチン療法 ・腫瘍抗原ペプチドワクチン療法 - 非特異的:
BRM(Biological Response Modifier)
BCG 膀胱癌
OK-432(ピシバニール) 胃癌・肺癌
クレスチン 胃癌・大腸癌・肺癌(小細胞)
レンチナン 切除不能胃癌
ベスタチン 成人非リンパ性白血病
受動免疫療法(養子免疫療法)
- 特異的:
CTL(細胞傷害性T細胞) 活性化T細胞
TIL(腫瘍浸潤リンパ球) 腹水・胸水 - 非特異的:
NK細胞 活性化NK細胞
γδT細胞
NKT細胞(αβー,γδー)